猫っかぶり彼氏。〜天然王子=俺様彼氏①〜
私はスライド式の、ガラスがはめ込まれた木製の戸を開けた。
一室のドアとは思えない、和風とはいえ豪勢な作り。
この中で、シオが待っている。
いや、まだ帰っていないかな?
私は試しに、部屋の奥にむかって声をかけてみた。
「ただいま〜」
「ナチ〜おかえり〜〜」
中からシオの声が届いた。高すぎず低すぎず、気持ちよく響くシオの声は、いつも私を安心させてくれる。
シオ、帰ってるんだ。早いなぁ……
いや、私が長風呂なだけか。
早くシオの顔が見たい。
一歩踏み出した瞬間。
コトン
あ……
巾着袋に入れていた、化粧品のセットを落としてしまった。
いくらお風呂あがりとはいえ、シオに眉毛のない姿は見せられない。
そう思って用意したもの。