猫っかぶり彼氏。〜天然王子=俺様彼氏①〜
「あれ?」
思わず声に出してしまって、しまった、と気付く。
だって、明らかに不意打ちだ。
彼の大きな手は、100円ガムであろうが10円チョコであろうが、完全に包み隠してしまう。
ガムを期待していたのに、手の中からはチョコが現れたのだから、本当に『あれ?』である。
「虫歯治療してるんですよ。今、綿が詰まってて。それで、ガム噛めないんです」
シオの微笑みは、私の心に軽々と侵入してきた。
3重も4重も錠をかけていた、私の中に。
しばらく恋はしない、と決めていたのに……。
シオの雰囲気は、穏やかで、優しそうで。
どちらかといえば俺様主義だった元彼と、同じ『オトコ』だと思えなかったからかもしれない。