ティップオフ


ピーッ!


試合の終了を告げるブザーが鳴ったと同時にワーとかキャーだとかいう歓声が会場いっぱいにあふれ出した。

「……………」

まだコート内で固まったままのチームメイトたちと足の先に転がるボールを見て、罪悪感が押し寄せる。


─試合終了の数秒前、私は相手チームからファールをされてシュート権が与えられた。

「頑張れー」

「入るよ」

と言う仲間の声と期待の眼差し。

その時の点差はわずか1点で、私たち弥生ヶ丘中が負けていた。

…そんな中でのフリースロー。
シュートは2回。
両方決めれば逆転勝ち。1本決めれば延長戦、入らなければ……。

色んな感情が一気に押し寄せて、私の身体はきっと周りから見ても分かるくらい震えていて。


一度深呼吸をしてから、シュートフォームに入った。

ガンッ!

ゴールのリングに当たって跳ね返ってくるボール。

「……あ、」

1本目のシュートは外れた。

身体が余計に震え、息が荒くなる。
次、外したら─
頭に浮かぶのはそんな言葉で。

落ち着かないまま、最後の1本。

ボールが手から離れた。

ガダン…

「…………」

会場が静まり返る。

リング上で不安定に揺れるボール。
私は生唾を飲み込んだ。

ダンッ

…直後、リングから落ちてきたボールに私は手を出すことすら出来ずにいた。



< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop