ティップオフ
―話は少し巻き戻る
「ファイトー!」
弥生ヶ丘中学校に入学してから数ヶ月。
学力テストや先輩の引退など少し忙しい部分もあるが学校にも部活動にも馴染んできた頃。
7月にあった先輩たちの引退試合…夏の総合体育大会をふいに思い出した。
─試合も4クォーター目に突入し、得点を気にする先輩たちの姿。
点数は97対24。完璧に弥生ヶ丘中が劣っている。
しかし"諦めるわけにはいかない。"
この大会が、泣いても笑っても先輩たちにとって中学校生活最後の戦いなのだ。
…私が入部したてのとき弥生ヶ丘中の女子バスケ部には2年生がおらず、『1年生が入らないと廃部』と言われていて先輩たちは部員勧誘に慌ただしかった。
なんとか部員が集まり廃部を免れた女子バスケ部は今、終わりと始まりを迎えていて。
終わり……3年間積み上げてきたものを精一杯出しきり、死に物狂いで戦う先輩たちの最後の姿。
始まり……先輩たちが引退したときから始まる私たちのバスケットボール。
ピー……
この瞬間たった今、終わって始まった。
鳴り響くブザーは感動も悔しさも全て呑み込んで。