ティップオフ
「新人戦?」
「そう。お前らの最初の大会だぞ」
練習が終わった後、顧問の松原先生から大会の話を聞かされた。
9月の中旬にあるらしいその大会に向けて、本格的に練習を始めるとのこと。
このときの私は期待とやる気でいっぱいで、少しでも上手くなろうと張り切っていた。
そしてあっと言う間もなく大会当日となり、私たちは不安の渦に飲み込まれかけていて。
「…大丈夫かな」
「怖いなぁ」
部員の口からこぼれる言葉は弱気なものばかり。
もちろん私もその中の一人で、会場に足を踏み入れた瞬間予想を遥かに超えた緊張感に押し潰されてしまいそうだった。
「出来る。きっと、大丈夫」
自己暗示をかけるように呟く緑ちゃんの言葉を私は聞き逃さなかったが、ガヤガヤとうるさい周りの音により他の部員の耳には届いていなかったらしい。
「……………」
ふと足元を見ると、明らかに他のチームより綺麗な自分たちのバスケットシューズ。
「ダメかもしれない」