気付けば溺愛

「…おはよう」

「……」

「花凜？照れてる？」

くくっと笑いながらつぶやく拓真。
その腕の中で動けない私は、どうしてこうなったのか思い出せなくて、何を言っていいのかもわからなかった。

「花凜が、『一度でいいから抱いて』なんてびっくりしたよ」

…え？

「先に帰ったっていうから心配して寄ったらいきなり抱きついてきて離さないしな」

は？

「…一度なんて言うな。俺…」

「待って」

拓真の腕から抜け出すと、一気に思い出した夕べの私の行動が次々と頭の中を流れていき、死にたくなるほど悲しくなる。