恋めぐり
イヤリングにそっと触れると、冷たい感覚が指に伝わる。

「父様、母様…」

忌まわしいと温かな家族の記憶が蘇る。

表裏一体の記憶を頭を振り追い出すと、彼女は奥に戻った。

「オウリちゃん?」

アイリスが心配そうな顔をしてオウリを見上げている。

「大丈夫だよ。アイツはもうこないから」

子供たちは大人の感情に聡いことをオウリは知っている。
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