恋めぐり
カンと渇いた音が響いた。

そこに出来た隙を逃す程、オウリは馬鹿ではない。

相手との間合いを一気に詰めて、剣を叩き落として、頬に平手打ちをした。

「痛ぇな!」

「当たり前よ、フルスイングだもの」

オウリには相手は誰か分かっていた。

「何しに来たの?ルーク」

ルーク

カイン達が追っている指名手配の男が目の前にいた。

「お前の歌を聞きにきたんだ。そうしたら、キラもいた。軍の犬もな」

「お客様だから、お金さえもらえば歌うわ」

「昔はオレにしか歌わなかったのにな」

闇の中から、端正な顔の男が現れた。

神秘的な黒髪と黒い瞳は黒曜石の様だと思った。

「オウリ、忘れたのか?この国がしたことを」

「さぁ、昔のことはあまり覚えてないの。覚えなきゃいけないことたくさんあるから」
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