恋めぐり
なんて恥ずかしいことをサラッと言いのける男だと思った。

恥ずかしくて言葉が出なかった。

「どうかしたか?」

「あんた背中に気をつけなさい」

それだけを言って足を進めた。

「どういう意味だ」

こういう男は、知らないうちに女を惚れさせて、三角関係になったあげく、背中を刺される可能性がある。

私が言えるのはそこまで。

そんなにお人よしの人間じゃない。


私が連れて来られたのは、剣道部の道場だ。

「男くさっ」

ブレザーの袖で鼻を覆った。
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