恋めぐり
その顔が、記憶の中の父に重なった。

顔はまったく似ていないのに。

私の父も、私の顔を見るたびに笑顔を向けてくれた。
水谷豊似の男は、ゆっくりと話し始めた。

「手短にお話しいたします。あなたは、来年の12月25日に死にます」

突然の死亡宣告に言葉も出なかった。

「心配しないで下さい。それは何もしなかった場合のこと。私の言ったことを果して頂ければ、あなたは死ぬことはありません」

水谷さんの話しを私は他人事の様に聞いていた。

「一年の間に、ある一人の男性から愛の告白を受けるだけです」

「知らない人から、好きだと言われても気持ち悪いだけよ」

「あなたとは縁しのある方なのです。夢の中で、あなたを殺した男を覚えていますか?」

私はうなづいた。

覚えているけど、それがどうして私の命と関係あるの?

「彼も輪廻の流れにのり、現代に生まれました。前世での約束を果してもらいます」
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