恋めぐり
オウリは自分でも一番の笑顔を男に向けた。

「そうですか。オレはカインと言います」

「良いお名前ですね。私は」

「オウリさんだろ。変わった名前だが何か意味でもおありになるのですか?」

先に言われたことに驚いていたけど、カーラに聞いたのかもしれないと彼女は顔にだすことはなかった。

「いえ特に深い意味は。ここに通い続けていただければ、コロリと話してしまうかも」

「商売上手な人だ。気に入った」


男は端正な顔の口端を少しあげた。

その顔は、悪戯好きの子供のようにも獣のようにも見えた。

オウリの心はこの瞬間、確かに男に惹かれた。
< 69 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop