極 彩 グ レ - ス ケ - ル
「色もここでタクシー拾うでしょう?」

「あ、あっちのコンビニで買い物してから」

「そう。じゃあ、ここで」

母さんの目の前で白いタクシーが止まる。

「うん、今日はほんとにありがとう」

「また連絡するわ」

笑顔で手を振った。
母さんを乗せたタクシーが遠くなる。

自慢の、母さんだ。
わだかまりがとけたいま、そう実感する。

闇に小さくなってゆく白いタクシーを
見送る。すこしだけ寂しい気持ちになる。
その時、

どん、

と背後から肩に軽い衝撃が走った。

さっきまでいたお店から出てきた人と
ぶつかってしまったのだ―――

理解してその人に向き直る。

「すみません!こんなところに立っ…」

「すみません、急いでいたもの…」

お互いを認識して言葉に詰まる。

「…色!?」

「…ネオ」

間違いない、ネオだった。
夏休みに入ってからだから約一ヶ月ぶり
だけれども、こんなに美しい人を
見間違えるはずもなかった。

細身の黒いスーツにネクタイ。
こんなフォーマルな格好は見た事がなかった。
それに、高級レストランから出てきた。
疑問はたくさんある。でも、なにより

「ネオ、どうして…」

「こっち」

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