極 彩 グ レ - ス ケ - ル

あたしの声は遮られ、少し強い力で
手首をひかれる。足早にレストランから
遠ざかる。あたしは何も言えないまま。

レストランの裏手、少し離れた所に
なつかしいハーレーがとまっていた。

無言でヘルメットを手渡され、
無言でネオはバイクを指差す。

あたしはそれに従った。ネオが煙草に
火をつけて、いくよ、と言った。

発進するバイク。

あたしは思考をまとめられないでいた。

バイクの振動も、香水の匂いも
風にのる煙草のにおいもそのまま。

でも

あたしはさっき言いかけた疑問を
心の中で反芻していた。

どうして?

ねえ、ネオ、

どうして泣いていたの――…?


イヤホンのない耳に風の音が煩く、
あたしは上質な生地のネオの
スーツに、顔を埋めた。


夜は、深く、なりつつあった。


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