極 彩 グ レ - ス ケ - ル
ごうごうと通り過ぎる風が
潮のにおいをふくみはじめる。

低いトンネルを抜けて見えたのは
灰色の水銀灯のあかりと
巨大な黒い海だった。

なぜか背筋がぞくりとして
ネオにつかまる腕に力を込めた。

ネオの腰は驚くくらい細くて、
それでも背中は広かった。

バイクは砂浜を通り過ぎて
高台にある灯台を目指していた。
この季節だからか、人気は全くない。

ついたよ、

そうネオが小さく言って、
あたしはそろそろとバイクを降りた。

初めてきたその場所は、

崖の切り立ったうえにあって、

心もとないガードレールの下には
黒い海が怪物のように口をあけていた。



風が強くて、髪が顔にまとわりつく。

ネオが後ろでタバコに火をつける音がした。
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