極 彩 グ レ - ス ケ - ル

夏休みが、はじまって
あたしは夏期講習で忙しかった。
ネオは写真を撮るための
小旅行に海外へ行くから
携帯がつながらない
とだけメールをよこして、
それきり携帯は圏外だった。

一度マンハッタンを見下ろした
写真のポストカードが送られてきて、
二学期は帰ってくると書いてあった。
だから連絡も我慢して待っていたのに。
正直、ネオがいない毎日は退屈だった。

「帰って、きてたんだ」

嫌味っぽくならないように口を開いた。

帰ってきたなら連絡のひとつくらいくれても、
という気持ちもどこかにあったのだが。

「うん。つい昨日ね。
  連絡取れないでゴメン」

ネオの声はいつものように優しかった。

さっきまで泣いていたような気配はどこにもない。


「元気そうだから安心したよ。それにしても偶然」


「うん、そうだね。色、ごめん」


「どうして謝るの?」


「連絡とれなかったことも、こんな夜に連れ回すことも、」


そしてネオは一息ついて、言った。


「情けない姿見せちゃったことも」


その表情は、例えがたいけど、寂しそうに笑っているようにも泣きじゃくっているようにも見えた。見ているほうの胸が痛くなるような表情だった。
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