極 彩 グ レ - ス ケ - ル
曲が終わった。
その人は、拍手をしてくれた。
「ステムだね。好きな曲だよ。
やっぱり、すごく上手かった」
「ありがとう、ございます」
眼鏡をかけながら応えた。
「ねぇ、時間はある?」
え?とその人を見ると、
にこにこと笑いながらあたしを
見下ろしていた。
「クレマティスを撮ったんだ。
是非君に見て欲しい。おいで」
その人はあたしの手首を掴むと
立ち上がらせた。
あたしはされるがままに
その人についていった。
何をしてるんだろ、あたし。
音楽室に一応施錠をして、
すたすたと先を歩むその人の
細い背中を見ながら歩く。
身長が167センチあるあたしより
頭ひとつぶんは背の高いその人。