極 彩 グ レ - ス ケ - ル
「そんなこと、初めて聞かれた。
あたしは、世界を美しいとは
思わないよ。というより、世界
を正しく把握できてなんていないの。
こんな目じゃ、ね。何を見ても
変化のない同じ色、似た輪郭。
面白味のかけらもない。でも、
世界があたしにとって美しくなくて
よかったとも思ってもいる」
「どうして?」
「だって、美しくて楽しい世界
だったのなら、いつか見えなく
なることに絶望するでしょう?
とるに足らない世界だから、
いつか見えなくなるとしても
残念に思わなくてすむ。
平気でいられるもの。」
「…そう」
ネオは、やっぱり優しい、
でも少しだけ悲しい表情を
していたように思った。