極 彩 グ レ - ス ケ - ル

あたしはそう言った。

でもネオはまた階段を上って、
あたしの一段下に来ると、
手を差し出した。

「つかまって」 

「いいよ、そんな」

「何?恥ずかしがってんの?」

ニコニコしながら聞かれて、
顔が熱くなるのを感じた。
仕方ないじゃないか、まとも
に男子と話したこともないのだ。

「そっそんなんじゃないしっ」

半ばやけくそでネオの手を
とった。ひんやりと冷たくて
あたしより大きな手だった。

一歩ずつ、ゆっくりと階段を
降りるのを手伝ってくれた。

嬉しい思いと情けない思いとで
胸がいっぱいになって、自然と
口数が少なくなった。

普通の人間にできることが、
できない自分がいやだった。

ネオは、あたしがそう思ってる
ことも知らずに一緒に階段を
降りて、三年の靴箱へ向かった。

あたしも、自分のローファーに履き
替えて外に出る。
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