極 彩 ｸﾞ ﾚ - ｽ ｹ - ﾙ

言いたいことがあるなら
言えばいいのに。

そんなことを思いながら
あたりを見回す。
誰もいないことを確認して
制服の内ポケットからMP3
プレーヤーを取り出して
イヤホンを耳にかける。

音が身体を貫く。

音楽はあたしにとって
大切なもので、きっとなければ
死んでしまうんじゃいかと思う
くらいに。

視覚に対して不安がある分、
鮮明な聴覚に頼りがちになるのは
仕方ないことかもしれない。

Let　it　be
が心地よく鼓膜を揺らす。
くちずさみながら掃除を終わらせた。

今日は土曜だからか、
いつもは煩い吹奏楽部の演奏が
聞こえない。

｢久々に寄るか、｣

掃除用具を片づけてスカートを
はたきながらつぶやいた。