極 彩 グ レ - ス ケ - ル

「あたしが入部届けだした時は
断ったのに?写真部はひとり
でいいって言ってたのにですか」

「あ、ホラ藤崎さんにはバスケがあるし」

「それでも写真部に入りたかった
から届けだしたんです。他のクラス
の子たちもそう。みんな断ったじゃ
ないですか。なんで水野さんだけ?
しかもスカウトって。先輩はご存知じゃ
ないかもしれないけど、水野さんは
目が「もういいよ」

ネオが、短くはっきりと言い放った。

藤崎さんははっとして口を噤む。
クラスの視線はこの一角に集まって
いる。痛い程視線を感じる。

「藤崎さん、そんなに写真を学び
たいなら映画部の部長に話をつけて
おくよ。彼はカメラ好きだし、写真
にも造詣が深いから教えてもらう
といい。他の入部届けを出してくれた
子たちにもそう伝えておいて」

部活説明会で、太った身体を揺らし
ながら息を荒くして部活紹介をし
ていた映画部の部長を思い出した。

「私たちはネオ先輩にっ…」

「おれは自分の写真を撮るのに
精一杯だから。どうしても写真部
がいいなら新しく部を作ればいい」

「…わかりました」

藤崎さんはきっとあたしを
睨むと、ネオにお辞儀して
どこかへ行ってしまった。

教室の空気が少し緩んだ。

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