極 彩 グ レ - ス ケ - ル
「あ。色」
「なに?」
「メアド」
「メアド?」
「うん。交換しとかなきゃ」
「あ、うん」
ネオは黒い携帯を取り出した。
「赤外線でいい?」
「あ、うん」
アドレスを交換した。
生まれて初めて男の子の
アドレスが携帯に入った。
なんだかすこし、
嬉しくなった。
顔に出ないように
意識しながらネオを見ると
じっと窓の外の桜をみつめていた。
「何、みてるの?」
「ん?葉桜になってるなぁって
思ってさ。ほら、そこの桜」
「あ、ほんとだ」
「なんかこの葉っぱってさ」
「うん?」
「きれいな色をしているんだ」
「そうなの?」
「色の話はしたくないかな?」
「ううん。教えて、その色のこと」
「やわらかくて、みずみずしくて、
新しい黄緑いろをしてるんだ」
「そうなんだ」
「似た色はたくさんあるけど、
固くなるまえの桜の葉は、眩しい
くらいの黄緑なんだ。ほんものの
黄緑なんだよ」
「どんな気持ちになる?」
「元気で優しい気持ちになれる」
「きっと、いい色だね」
「新しい色は、好きだよ」
「あ」
「え?」