極 彩 グ レ - ス ケ - ル
「じゃあ、行こうか」
ネオは棚から慣れた手つきで
いろんなものを取り出した。
あたしには何に使うのかさえ
わからないようなものたち。
暗室に通された。
独特の臭気と、一歩先も見えない
ような闇。奥の椅子に腰かける。
ネオはゆるく縛っていた髪を
まとめなおし、エプロンをつけた。
薬品を扱うからか、マスクを渡される。
「いい?閉めるよ」
「いいよ」
ネオがドアを閉ざす。
完全な暗闇。
かちり、という音がして
ぼんやりと室内が照らされた。
「暗くないといけないんじゃないの?」
「これ、写真に影響を与えない色の
光なんだ。赤色灯っていうんだけど」
「あかい色をしてるの?」
「そうだよ」
「血と、同じ色?」
「血も、赤いけど赤色灯とは違う色だよ」
「違うの?」
「同じだけど、違うんだ」
「ふぅん」
そこからは黙ってネオの作業を見た。
ネオはとても手際がいい。
ただでさえよくない視界が、こんなに
光の少ない場所だからかさらに悪い。
換気扇のまわる音と、てきぱきと
ネオが作業をする音だけが狭い室内
に響いていた。
薄ぼんやりと浮かび上がるネオの
白いワイシャツ。
初めて来たのに、何故か落ち着く。
多分、暗闇だからだ。
あたしは、暗闇に慣れている。
目を閉じる。