極 彩 グ レ - ス ケ - ル
水音や、ネオが作業する音。
目を閉じながら聞いていた。
瞼のうらは、完全な黒。
本物の、闇。
なにひとつ、存在しない。
昔は暗闇が怖かった。
中学のときだっただろうか、
アイマスクを買って暗闇に
慣れる練習をした。
いまは目を開ければ、
グレースケールとはいえ景色が映る。
でもいつか、あたしは失明
する。角膜移植をすれば治る
かもしれないが、角膜が不足
している今、何年待てばいいか
もわからない。それにあたしは
自分が見えるようになることを
大して望んではいなかった。
見えなくなったとき、
本当に暗闇しかなくなったとき、
暗闇に慣れていなかったのなら
きっと恐怖で押しつぶされる。
だから、暗闇に慣れた。
ある意味、自分を守るために。
もし、完全に目が見えなくなったら
その時は
「死のうと思ってるの」