極 彩 グ レ - ス ケ - ル
「今、なんて言った?」
気づくとネオが目の前にいた。
「もう、終わったの?」
「とりあえずね。一回赤色灯消して
も大丈夫?暗くなるけど」
「大丈夫だよ」
かちり、と音がして
完全な暗闇になった。
ネオが、あたしの隣に座るのが
わかった。
「死にたいって、言った?」
静かな声。
「死にたい、じゃないよ。
死のうと、思ってるの。
いつかわからない。明日かも
しれないし10年後かもしれない。
完全に失明したら、死のうって
ずっと前から、決めてたの」
「どうして?」
「今、怖くない?」
「え?」
「なにひとつ見えなくて、暗くて、
どこまでも暗くて、そんな世界が
続くことに、ネオは絶望しない?」
ネオは、黙った。
あたしは続ける。
「だからあんまり見えなくなることに
恐怖を感じないのかもしれない。
見えなくなったら、死ぬって決めてた。
だから平気なのかもしれない。人に
迷惑をかけながら生きることよりまし。
なにひとつ楽しみのない世界で生きる
より、絶望のなかで這いずって生きる
より、ずっとまし。見えなくても、
一生懸命生きてる人達なんていっぱい
いるけど、きっとあたしには無理なの。
暗闇ででも、生きていたいと思える
そんな理由なんて、あたしにはないの」
言葉がこぼれおちる。
誰にもいったことはなかったこと。
「怖くは、ないの?」
ネオが小さな声で言った。
「怖いよ。でもあたしは、生きてく
ことのほうがずっと怖いの」
「この暗闇は、怖いの?」
「こわくないよ。どうしてかな、
ネオが近くにいるからかも」
「ねぇ色」
「なぁに」
「おれ、色が死ぬのなら、
一緒に死ぬ。決めたから」
突拍子もない。
でも、多分、ネオの顔は
真剣なんだろう。見えなくても
なぜか、伝わった。
「どうして?ネオには沢山の
ものがあるのに」