極 彩 グ レ - ス ケ - ル
「生きててほしいって思う人を
救えないような自分に価値なんて
ないんだよ。だから、いいんだ」
「ネオに、生きててほしいって
思う人はたくさんいるから、
そんなこと言っちゃいけないよ」
「色に、生きててほしいって思う
人が少なくともひとりはここに
いるよ。だから死ぬなんて言わ
ないでよ。おれは、色に生きて
いてほしいと思うから」
「あたしの目が見えなくなれば、
ネオだってあたしが疎ましくなる」
「ならないよ。わかるもん。
絶対にならないよ」
「気持ちはありがたく受け取るね」
「色、死なないでよ」
「わからないよ」
「おれ、色にたくさん楽しい思い
させるよ。生きていたいって思わせる」
「楽しみにしておく。なんで、そんな
に優しくしてくれるの?」
「色は、おれの大切な人に似てるから」
「そう」
「あとちょっと作業したら終わるから、
ちょっと待っててね」
「うん。わかった」
ネオはまた作業に戻った。
大切な人に、似てる。
ネオの声は優しかった。
女の、ひとなんだろうか。
なぜか、きけなくて
ネオの背中をみつめていた。