極 彩 グ レ - ス ケ - ル

ネオの作業がおわり、
暗室から出ると外は既に
薄暗くなり始めていた。

階段のところまで来ると、
ネオはこのあいだのように
手をとって降りてくれた。

そのまま、駐輪場まで歩く。

その時、後方から黄色い
声がした。

「ネオせんぱーいっ!」

振り向くと、藤崎さんだった。

「ああ、藤崎さん」

「今から帰られるんですかぁ?」

「そうだよ」

彼女には完璧にネオしか見えて
いないらしい。なんとなく立ちっ
ぱなしでいた。

「っていうか、ネオ先輩って
こっちでしたっけ?」

「いや、違うけどさ」

「じゃぁ、どうして?」

「別に、気にしないで。
色送ってくからもういいかな?

「あっ、はい。またメールします」

そう言いながら藤崎さんは
横目でじろりと見た。
明らかな敵意が込められていた。

「ネオ、あたしひとりで帰れる」

「いいよ。送ってく」

「水野さんって、ネオ先輩と仲いい
んだね。呼び捨てにしてるくらいだし」

藤崎さんが笑顔でこっちを見る。
目が笑ってない。

あたしは黙ってしまった。

「ネオ先輩、あたしもネオって
呼んでもいいですか?」

今度は、ネオに向き直る。
大きな瞳、小さな顔、くるくると
巻かれた髪。かわいいなぁと思う。

「別に、構わないけど」

「なら、また」

にこりと藤崎さんは笑って、
体育館の方に走っていった。
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