極 彩 グ レ - ス ケ - ル
「え、かえ、こちら…」
かえとその人は自転車を降りて、
あたしと並んで歩きだした。
「あ、えっと、紹介するね」
かえが口を開くとほぼ同時に、
その人がしゃべりだした。
「かえちゃんの彼氏のトシです♪
三年六組9番!サッカー部副主将!
すきなものはかえちゃんとサッカー
と友達!そこで!今から!僕の!
大切な親友に電話をかけまーす!」
元気よく言うと、携帯を取り出して
耳にあてた。
「ごめんね、うるさくて。一応彼氏。
顔くらい覚えてやっててね?」
かえが苦笑しながら言う。
「あ、うん」
あたしが言い終わるまえに、
トシくんが大きな声で電話しはじめた。
「もっしもーし!おはよー!トシだよ!
今どこー?うん、あ、音聞こえるわ。」
曲がり角の奥から、聞いたことのある
爆音が聞こえた。
近づいてくる。
ネオだ。
トシくんが大きく手を振っている。
かえはぽかんと口をあけている。
ネオのバイクが目の前で停止した。
「急に電話あったからびっくりした」
ネオがトシくんに言った。
「いやいや、色ちゃんに会ってさ。
どう考えても遅刻っしょ。そこで
ハーレーに乗った王子様に色ちゃん
乗せてってもらえないかと思ってさ」
「それは大丈夫だけど、おまえら夫婦
はチャリで大丈夫なワケ?」
「あっ!やべ、かえ、行くぞ!」
「うん!あっ、西条寺先輩、トシの
彼女で色の友達の山郷かえです!
以後お見知りおきを!」
「りょうかーい。トシよろしくね」
「はい!色をよろしくお願いします」
かえはあたしに手を振り、
自転車でトシくんを追いかけた。
「色、行くよ」
「あ、うん、ありがと」
ヘルメットをつけてネオのうしろに
座った。ネオはすぐに発進する。
イヤホンが手渡される。
くるりが流れていた。