極 彩 グ レ - ス ケ - ル
固まってしまった。
黒板の溝にころがったチョークは、
どれもみんな、濃淡の差はあると
いえ灰色にしか見えないのだ。
白だけが、かろうじて見える。
あたしに水色のチョークが
識別できるわけがない。
教師は、多分あたしがそうである
ことを、忘れている。
クラスが静まり返る。
「あの」
口を開いた時だった。
「どうした、藤崎」
教師が、真っ直ぐに手をあげた
藤崎さんを指名した。
「先生、ちょっと失礼じゃないですか。
水野さんは色盲で色が判別できない事
はご存知じゃないんですか?皆の前で
水野さんを困らせるなんて、酷いです」
立ち上がり、何故か得意げにそう、
クラスに響く声で藤崎さんは言った。
「そうですよー。水野さん可哀想」
キラキラグループのひとりが言う。
教師は、あわてて帳簿に目を落すと、
あたしを見た。
「すまなかった。戻っていいぞ」
なにも、書くことなく
あたしは席に戻ることになった。
めぐみが怒りの表情で藤崎さん
のことを見ていた。あたしは
めぐみを目で制した。
マジで? へー、そうなんだ
クラスのどこかで、小さな声が
いくつもしている。