極 彩 グ レ - ス ケ - ル
白く平面的なデザインのそれ。
二段の鍵盤にたくさんのボタン。

「シンセサイザー?」

「うん。ただのキーボードとしても
使えるんだけど。どう?」

「どう?って、どうしたの?コレ」

「私物なんだけど、せっかくだから
部室に置こうと思って。さっき
ちょっと取りに帰ったんだよ」

「部室に置く?」

「うん。色がひくために」

「あたしの、ため?」

「ってゆーか、俺が色のピアノ
聞きたいだけ。音楽室はいつも
は使えないでしょ?」

「…ありがと、ネオ」

「どういたしまして。
ねぇ、なにかひいてよ」

あたしは少し笑って、
始めて会った時のように訊ねた。

「なにが、いい?」

「色の、一番好きなうた」

「…なんだろう」

「で、できるなら歌って」

「歌う?」

「うん。また聞きたいし」

「恥ずかしいよ」

「もう聞いたことあるのに。
気にしないでよ。ね、お願い」

「う…」

ネオがあまりに真面目な顔で
言うから、思わず頷いてしまった。

シンセの電源を入れ、音量をかなり
小さく設定する。椅子に座りなおす。


「一番好きな曲なんて、ありすぎて
きめられないから、好きな曲のひとつ
ってことできいてくほしいんだけど」

「うん」

ネオは、穏やかな目であたしを
見ていた。
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