極 彩 グ レ - ス ケ - ル


グランドピアノのような重みは
なくても、じゅうぶんに綺麗な音。

静かに、小さく弾き始めた。

初めて聞いたときは、
鳥肌がたって、涙がこぼれた曲。

「落日」
ちいさくネオが呟いた。

東京事変の「落日」

悲しくで、美しくて、
かっこいい曲。

息を吸い込み、もう既に脳内に
インプットされている歌詞を辿る。

思ったよりも、声は問題なく出た。
小さくだけれど、歌う。

ネオも、目を閉じて口ずさむ。

指は鍵盤をすべる。

口にする歌詞は、美しい。

間奏を弾き、
最後の大サビ。

喉を震わせる。
指は軽やかに動く。

曲が終わった。

ゆっくりと指を鍵盤から降ろす。

息をつく。

「…色」

「なに?」

「すげえ。鳥肌たった。ってか、
やっぱうめぇ!まじですげぇ!」

ネオは目をきらきらさせて
あたしの肩を揺さぶった。

「あ、ありがとう」

「シンセ持ってきてよかった!まじ
感動したわ!おれ、落日大好き!
色、声もいいし演奏もすごいし、
絶対音楽の才能ある!プロとかに
なったりすんの!?目指してんの?」

「そんなの考えたことないよ…。
そもそも誰かのまえで弾いたり
うたったりしないから。でも、
褒めてくれてありがとう」

「絶対、もったいないよ。才能
あると思う。てか、次!もっかい
なんか弾いて!お願いっ!」


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