極 彩 グ レ - ス ケ - ル

次は、跳ねるような軽快なピアノ。

猫踏んじゃった から始まる
かわいらしい曲。

「母国情緒!」

ネオが嬉しそうに言う。

笑って頷いてから、歌いだす。

ネオはにこにこしている。

心が、晴れていくのを感じた。


次から次へと、東京事変と
林檎さんの曲を弾いた。

たまにクラッシックや
ビートルズも混ぜながら。

ネオはどれも喜んで聞いて
くれるから、嬉しくて、
恥ずかしさなんてとうに忘れて
弾いて、歌った。

生まれてはじめて、さぼった授業。
生まれてはじめて感じる、
歌うことの楽しさ。


突如、鳴り響いたのは
4限目の終了のチャイム。
ちょうど、群青日和が終わった時だ。


「あ、昼休みだね」

ネオが呟いた。
瞬間、大事なことを思い出す。

「あ、お弁当…」

「作ってきてくれた?」

「うん。でも教室だ…」

藤崎さんや、興味津々な目で
あたしを見ていたクラスメイト
を思い出す。なんとなく、
戻りづらい。

「じゃぁ、食べなきゃ。おれ、
とってくるから。かえちゃん
いるからわかるっしょ!」

あたしの表情を見てか、ネオが
立ち上がった。

「そんな」

「気にしないで。待っててな」

ネオがにこりと笑って、
部室を出て行った。

「ありがと、ネオ」

ネオがいなくなってから呟く。
心からの言葉だった。
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