極 彩 グ レ - ス ケ - ル
「色のピアノききたーい!」
詩織がとんでもないことを口走る。
「おー!せや、聞かせてぇな!」
「聞きたいねーかえちゃん」
「そうだねートシ」
助けを求めるようにネオを見る。
ネオは、空っぽのランチボックス
に手をあわせているところだった。
「ごちそうさま。おいしかった。
食後のピアノ、おれも聞きたいな」
観念して弁当箱を片す。
シンセサイザーの前に座った。
「なにが、いい?」
「色が弾けるのでいいねんで」
「決められないから…」
「透明人間」
ネオがにこにこしながら
手をあげてリクエストした。
「透明人間って、東京事変の?」
トシくんが驚いたように言う。
「ほんまに事変なん?事変の曲
って大抵めっちゃ難しいねんで?
うちの彼氏、コピバンやっとるけど
四苦八苦しとるで?」
「好きだから、よく聞いてたし、
大丈夫だとおもうけど…そんなに
うまくはないから期待しないで」
「大丈夫っ早く聞かせて!」
詩織のこえを合図に、
部室が静まった。
あたしは背筋をのばし、
ふかく息を吸う。
鍵盤に、指先が、ふれる。