極 彩 グ レ - ス ケ - ル
科学室からこっそり貰ってきた氷で
アイスティーを作りながら時計を見上げる。
今日はネオが部室にくるのが随分遅い。
なにかあったのだろうか?
そわそわと時計を見ながら、ドアの
外を気にする。
十何回目かに時計を見上げた直後、
写真部のドアがあいた。
ネオが眉根に皺をよせながら入ってくる。
「遅かったね」
「担任に呼び止められたんだ。
進路のことで。本当にしつこい」
「進路かぁ…」
ネオのまえに冷えたアイスティーを
置きながらつぶやく。
夏服への移行がはじまって、
あたしは紺のセーラーを着ていた。
ネオは制服のシャツさえ着ずにギャルソンのTシャツ
を着ていた。めつきの悪いハートが似合う。
運動部の三年生は総体で引退試合を迎え
受験勉強に必至になる。つい先日トシ君
ののサッカー部は県で2位の好成績を残した。
そんなトシくんも、サッカーでの推薦で大学
入学を目指して課外に塾にと頑張って
いるらしい。かえが遊んでくれないと
嘆いていた。うちの学校ではほとんど
の生徒が大学への進学を目標とする。
「ネオも、どこか大学うけるの?」
アイスティーを一気に3/4飲んでしまった
ネオが顔をあげた。
「大学、行かないでプロになろうと
思ってたんだけどね。教師陣は
国立やら留学やらを薦めてくる」
「そっか、やっぱそうだよね」
全国模試の順位付で全教科上位
に名前が載ったネオ。800点ちゅう
795点とは、どうしたものだろう。
「受験しないつもりなんだけど」
「学校としてはネオがすごいとこに
行くのを期待してるんだよね。
学校の評価も上がるし…」
「大人ってこわい。おれは写真
さえ撮れてたら満足だけどね」
ネオが興味なさげに呟く。
窓の外では気の早い蝉が
鳴き始めていた。