猫とうさぎとアリスと女王
 時間帯を考えて“どうせまたサボでしょう”と高をくくっていました。

というかサボ以外には急に家にやって来る人などいません。
イオやシーナはきちんと連絡をくださいますし、トラだって普通は連絡をくれます。

少々うんざりしながら私は玄関のドアを開けました。


そしてそこに立ち尽くす彼女を見て、言葉を失います。


「お姐さん・・・。」


そこにいたのはかつての仲間、キキでした。


「会いたかった・・・!」


そう言ってキキは私に抱きつきました。

キキの後ろにはトラ。
苦笑しながらも私とキキを見つめています。

キキはと言えば私に抱きつきながら泣きじゃくる始末。
会えなくなっただけで、こんなに涙がでるものでしょうか?

けれどその涙は、いかにキキが私を慕っているのかが読み取れます。


「トラ、事前に連絡をしてくれると嬉しいのですけれど。」


するとトラは唇を噛み、少し気まずそうに口を開きます。


「俺もそう言ったんですけど、キキが聞かなくて。」


キキのせいでBABYの長袖シャーリングカットソーの肩口がびしょ濡れです。
どれだけ泣けば気が済むのかしら?
いくら何でもこれは涙の無駄遣いというものでは御座いませんこと?


「ほらキキ、お話ならリビングでゆっくり聞きますから。
泣くのはやめていただけるかしら?」

「お姐さん・・・あたし、あたし・・・。」

「もういいですから。ほら、いらっしゃい。」


キキは涙を拭きながら頷きました。
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