猫とうさぎとアリスと女王
 ボブに近いショートヘアに、ガタガタの前髪。
未だに散髪は自分でやっているようでした。
相変わらずの一重瞼、メイクもしない顔に映えるそばかす。

そこには以前と少しも変わらないキキがいました。


「今ここにいる理由、貴方はわかっているでしょうね?」


キキはびくびくとしながらずっと下を向いています。


「ドラッグはすぐに止めなさい。」


私が一言だけそう言うと、呟くようにキキが言います。


「お姐さんが・・・お姐さんがいなくならなければ、私はクスリなんてやりませんでした。
隣で前みたいに私を叱って下さいよ!
キキは頭の悪い子だからって言い続けてくださいよ!」


キキは拳をぎゅっと握りながら怒鳴ります。


「キキ、やめろ。」


取り乱すキキをトラが制します。

キキは冷静さを取り戻しましたが、静かに涙を流しました。
その一筋の光の筋が私の心を痛めます。


「お願いです・・・お姐さん。戻ってきてください・・・。」


ズキンと胸の奥が痛みました。

キキ、貴方もトラと同じ事を言うのですね。
もう貴方たちとは関わりたく無いというのに・・・。


「キキはとにかくそのドラッグとディーラーから縁を切ること。いいですね?」


キキはコクリと頷きました。

涙は未だ流れ続けていました。


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