猫とうさぎとアリスと女王
 ドラッグは身を削るだけの単なる不純物。
命を削るリスクを犯してまで幻覚を見たいのでしょうか?

けれどきっとそれは、この辛い現実という物から逃れたいから。

だからキキもサボもそんな物に手を出すのでしょう。

けれどそれは逃げに過ぎないのです。
臆病なだけ。


それにドラッグを売る側の人間は、お金のことしか頭にありません。
そんな人間にずっと付きまとわれるなんて嫌では無いですか。

何ゆえそんなものを使用するのでしょうか。


私はドラッグに溺れていった人間を何度も見ています。

オーヴァードーズで亡くなった人間。
止めたいと思いつつも止められない人間。
禁断症状に苦しむ人間。
そこから更生していく人間。


私はドラッグだけは許せません。
この世から消し去りたい物の一つです。


「トラ、このままデーィラーを泳がせておいた方がよろしいかしら?」


トラは難しい顔をします。


「キキがディーラーと繋がってる唯一の人間ですから、その方がいいかもしれませんね。
その方が危険は及ばないと思いますし。」

「姐さん、あたしクスリを売っている人間とは繋がってません。」


いつの間にか泣き止んだキキがそう言いました。


「どういうことです?」

「あたしがクスリを買ってるのは赤の他人。
今出回ってるクスリを売っている大本は幹部を通し、その幹部は関係ない路地裏のガキやギャングなんかを使ってるんです。」

「つまり徹底して足を摑まれないようにしてるって訳か。」


お金のことになると、そういう人間はくるくると頭が回るようです。

本当に憎らしい。


「それにあたしがクスリを買うとき、毎回違う人間が来るんです。
本当に徹底してやってますよ、あそこの人間は。」

「それだけクスリが飛ぶように売れてるってことか。」


どうやら私は、目を背けられない事実と向き合わなければならないようです。


もう縁を切るとは言いましたが、これだけは放っておけません。
< 102 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop