猫とうさぎとアリスと女王
 唇が触れた頬が燃える様に熱くて、私はその熱に侵されて倒れてしまいそう。

暗くなった映画館。
隣に座るシーナ。

大音量で流れる映画予告。


どう足掻いても内容など頭に入りませんでした。

けれど映画を見ている内に段々と引き込まれ、ついには目が潤む始末。

アスペルガー症候群という精神病を抱えながら恋をする男女。
その恋愛模様は決して器用だとは思えません。
けれどその痛々しい苦難を乗り越えて結ばれる二人が、あまりにもピュアで素敵だったから・・・。


映画が終わり、館内に緩い灯が燈ります。

しばし余韻に浸っていると、シーナが小さな声で囁きました。


「泣くほどいい映画だった?」


私は無言で頷きました。

するとシーナは微笑んで続けます。


「確かにいい映画だったよね。僕も感動したもん。
でもよかった。本当はマコが退屈しちゃうんじゃないかって心配だったんだ。」

「私でも十分楽しめましたわ。」


するとシーナはとびきりの笑顔で私を見ます。


「ならよかった。」



 私たちは映画館を後にし、近くのこじんまりとしたレストランで昼食を摂りました。

映画の話をしたり、二人だけの会話を楽しんだり、それはもう至上の幸せと言っても過言ではありませんでした。
とても和やかな空気が流れ、私は時が経つのも忘れてしまうほどでした。


大好きなシーナと、こうして二人で笑っている。

二人で同じ時間を共有している。


それだけで、とても幸せになれました。
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