猫とうさぎとアリスと女王

　「確かに茶色も可愛いですけれど、茶色のお洋服は持っていませんし・・・。
それに何より私、茶色のお洋服が似合いませんの。」


そうなのです。

私にはショコラ、ブラック、グリーンとにかく深い色が似合わないのです。
なので当然クラシカルロリヰタの着用するようなエレガントなお洋服は似合いません。

だから今までVictorian maidenやMary Magdaleneのようなメゾンは避けて通ってきたのです。
Innocent Worldもクラシカルな物が多いのですが、可愛いお洋服もたくさんあるので時折見に来てはいたのです。

けれど駄目。
なんだかエレガントなお洋服って、私が着ると子どもが背伸びをして大人ぶっているような気がして仕方無いのです。


けれどシーナはそんなことなど笑い飛ばして言いました。


「馬鹿だな、マコは。」


シーナはクスクスと笑っています。


「何が・・・可笑しいんですか？」


私が膨れっ面で聞けば、シーナはこう言いました。


「人間誰でもそうだけど、似合わない服なんて無いんだよ。
たまに気難しい服は人を選んだりするけれど、それって着る人の心の持ちようで変わることなんだ。

例え服に嫌われても“絶対着てみせる！”って自分を高めれば、服だってその努力をわかってくれる。
前は茶色はマコに似合わなかったのかもしれないけど、今なら似合うと思うけどな。

確かに黒までいくとマコには重過ぎる感じがするけど、このブランドの茶色は軽めの色だろ？だからきっと似合うって。
チョコレートみたいで可愛い色なのに、着ないなんて勿体無いよ。」


そう言ってシーナは店内のお洋服を物色し始めました。


「シーナ？何をしてるんです？」

「僕が見立ててあげるよ。待ってて。」


シーナはそう言ってお洋服を選び、店員さんに手渡します。


「すいません、試着ってしてもいいんですよね？これ全部なんですけど。」

「ええ、構いませんよ。今ご用意いたしますね。」


店員さんが笑顔で対応し、私はフィッティングルームへと押し込まれるのでした。