猫とうさぎとアリスと女王
 僕はあまり母さんのブランドの店には入ったことが無い。
まず洋服に興味が無いし、ウィンドウショッピングもしないから。

お店に入るとすぐに彼が出迎えてくれた。


「眞由美さんから話は聞いてるから。じゃあ、上に行こうか。」


店員さんは彼以外に三人。男性が一人に、女性が二人いた。
顔見知りの人もいたけれど、知らない人もいる。


「じゃあ一番上、フィッティングルームとして使っちゃうんで。よろしくお願いします。」


彼は他のスタッフにそう言い残した。

お店は三階立てになっていて、最上階だけ新商品の為のフロアになっているようだった。
まだ準備中らしくむき出しのボディが置いてあるだけだ。
あとは僕に合わせるためのメンズ服が何着かある。

これ、全部着るのかな・・・。


「疲れるかもしれないけど、休みたかったらすぐに言って。」

「はい。」


さっさと済ませて早く帰りたい。もう何もかも面倒だ。


「思いっきり派手にしても、シンプルにしてもいいと思うんだけどどうしたい?
ほら、飛絽彦君は顔もスタイルもいいから何でも似合うんだ。」


また媚売ってる。そんなことして楽しいのかな?


「どっちでもいいんで、好きなようにしてください。」

「髪は少し切った方がいいかもね。この髪型気に入ってるなら切らないけど。」

「どっちでもいいです。好きなようにしてください。」


彼は困ったように苦笑いをした。

父さんと母さんは気に入ってるかもしれないけど、僕は絶対同じようにはならない。
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