猫とうさぎとアリスと女王
 「シーナっ!!!」


サボが勢いよくタケの部屋に入って来た。

泣き崩れる僕の横に来て、肩を支えてくれる。
急いで来てくれたのか息が上がっているようだった。

でもそんなことを気にしている余裕は僕には無い。


「さっきタケから電話あった!
“飛絽彦のこと頼む”とか変なこと言いやがるから来てみれば、どういうことだよ!?
なんだよこの部屋!」


僕は手紙を渡した。

サボは急いでそれを読む。


「シーナ、行くぞ。」


サボは僕の腕を掴んだ。

けれど僕の体は鉛のように重く、思ったように動かない。
体が床に縛り付けられてるみたいだ・・・。


「おら、立てよ!まだ間に合うかもしれねえだろ!立て、シーナ!」


サボに引っ張られた手が痛い。

痛い、痛い、痛い。


「・・・やだ。」


サボの力が緩む。


「おい、何馬鹿なこと抜かしてんだよ。立てっつってんだよ!」

「嫌だ!放して!!!」


僕はサボの手を払いのけた。

サボは呆れたように息をつき、机を蹴り飛ばした。
物凄い音がする。

でも僕の心は何も反応しない。
腐ってしまったみたいだ。麻痺しておかしくなった。


「何なんだよてめえら・・・。好き合ってんのになんで離れるんだよ・・・!
何だよそれ・・・。意味わかんねえよ・・・。」


サボはそう呟いた。

まるで自分のことのように、胸を痛めているようだった。






“忘れて欲しい”




タケ、あの言葉は全部嘘だったの?
好きだって言ったことも、愛してるって言ったことも。
一緒にいようって言ったじゃん。
死ぬ時も一緒だって。

嘘つき。


タケの嘘つき。


タケの馬鹿。



忘れられる訳無いだろ。

僕がどれだけ好きだったか知ってる?


ねえ、タケ。

タケ。



岳志。





いくら呼んでもタケはもう何も答えてはくれない。


聞きたいことも聞けず仕舞い。





高校一年生になろうという頃、タケは僕の前からいなくなった。
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