猫とうさぎとアリスと女王
 それから僕は高等部へと進学し、晴れて高校生になった。

タケからの連絡は全く無かった。
けれど僕はまだ最後の望みを捨てきれず、携帯電話の番号もアドレスも変えずにいた。

サボは何度も“会いに行かなくていいのか?”“探さなくていいのか?”って言ってくれた。
僕はその度に頷いた。

母さんに聞けば、タケの居場所なんて一発で分かる。
調べれば住んでる場所だってわかる筈だ。

けれどそうしなかったのは、タケのことを信じて待っていたかったから。


悩み抜いた末、僕に知らせずに行くことを決意したと知っていたから。

僕は信じて待ってる。
きっとタケは僕のことを迎えに来る。



死ぬ時は一緒だって約束したから。




 あれから一年、僕は待ち続けた。


その結果がこれだ。



またあの時と同じように手紙で用を伝えるタケの神経、疑うよ。

内容は酷いものだった。


海外での仕事が成功し、僕の母さんにその腕が認められたこと。
その結果、ショップ店員では無くデザイナーとして働くことになったということ。

何ヶ月か前に日本に帰国したこと。

そうして海外のショップで一緒になった同じ職場の女性と、結婚するということ。

その女性のお腹には、すでに新しい生命が宿っていること。


それと、結婚式の招待状。




よくこんな無神経なことが出来ると思う。

僕も昔よりはほんの少し強くなったみたいだ。
呆れて涙も出ない。


一年も信じて待って、こんなバッドエンド。


馬鹿みたい。



本当、馬鹿みたいだ。
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