猫とうさぎとアリスと女王
 シーナと岳志さんが何をどう話しているのか気になりましたが、私はそれを気にする立場では無いと気付きました。
きっと二人は納得のいくように御話をしていることでしょう。

岳志さんはとても優しそうな人で、ほんの少しときめいてしまいました。
だって初対面のこんなロリヰタ娘に向かって“可愛いお客様”だなんて言ってくださったんですもの。
雰囲気はほんの少しシーナと繋がるようなものを感じました。

それは今、私の横にいる智鶴さんも一緒でした。
和やかな雰囲気。
周りの空気の流れがゆったりしているような感じがシーナととても似ています。


「私は白河智鶴。もうすぐ日比谷になるけれど。ロリヰタちゃんは、名前なんて言うの?」

「マコです。あの、歩いていても平気ですか?」

「マコちゃんね。気遣ってくれてありがとう。でもまだお腹も大きくないから平気。」


智鶴さんはそう言ってお腹をさすりました。

まだ目立たないそのお腹の中に、もう一つ命が入っているとは思えません。
智鶴さんの体系はとても細く、モデルさんのようでした。

花柄のワンピースが風に踊っています。


「マコちゃんはさっきの彼の恋人?」

「いいえ!まさか!」


私が必死で否定すると、智鶴さんはクスクスと笑いました。


「じゃあ、岳志の元カレか。」


智鶴さんは微笑んでそう言いました。


「ご存知なんですか?」

「うん。岳志が結婚決める前に話してくれたから。
でもあんなに格好良くて若い子だとは思わなかったな。羨ましいくらいなんだけど。」


声を出して大きな口で笑う智鶴さんは、子どものように見えました。
決して下品には見えない笑い方。

私にはほんの少し羨ましく思えます。


「御免ね。やっぱちょっと辛いみたい。座っていい?」

「ええ。」


私と智鶴さんは公園の片隅のベンチに腰を下ろしました。
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