猫とうさぎとアリスと女王
 「驚きませんでした?」


私が恐るおそる聞いてみると、躊躇わずに智鶴さんはこたえます。


「かなり驚いた。私その時振られるかと思ったもん。」


そして智鶴さんはまた大きな声で笑いました。


「昔、一回だけ男の子と付き合ったことがある。体も重ねた。キスもした。本気で好きだった。そう言って岳志は私に全部話してくれたの。

まるで若返ったみたいだったって言ってた。甘い夢を見てるみたいだったって。」


「それなのに別れたんですか?」


「私もマコちゃんと同じこと思ったの。
そんなに好きだったら別れることなんて無いじゃない?白い目で見られることもあるかもしれないけど、それを覚悟で同性愛者になればいいでしょ?

岳志もすごく悩んだんだって。
別れたくなかったし、彼を泣かせたくなかった。そう言ってた。

でも、岳志は臆病者だったの。自分で言ってた。

彼は根っからの同性愛者じゃ無かったんでしょ?」



確かに、シーナは過去に女性を愛したこともあったと言っていました。


「生粋の同性愛者ならともかく、まだ未成年で不安定な子の視野を狭くする勇気が無かったって。
岳志が原因で同性愛者だって勘違いしてる場合だってあるでしょ?
本当にそうかわからないのに、彼を同性愛者だって確立させてしまうって。

自分のせいで過ちを犯させてるみたいで怖かったみたい。

同性愛が過ちでもいけないことでも無いのはよくわかっているのに、彼と付き合っている間中ずっとそれが付きまとってたらしいの。


だから泣く泣く別れたみたい。

置き去りにするような真似したけど、あんな酷いことしたらすぐに嫌いになって忘れてくれると思ったんですって。

自分でも馬鹿な真似したって言ってた。
きちんと話せばあいつはわかってくれたかもしれなかったのにって。」



私は、やり切れない気持ちで一杯でした。


シーナの代わりに怒鳴って怒って責め立てようとも考えていた私が、酷く浅はかに思えました。



何故愛し合っているだけなのにこんなにも辛い結末になってしまうのでしょうか。




やはり神様は意地悪です。



幸せな分、困難を与える。
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