猫とうさぎとアリスと女王
 代官山は静かで大人な街。
そこに真っ白なスヰートロリヰタが現れれば当然、浮くことは間違いありません。

私だってそれくらい自覚しているのです。
TPOを考えなければならないことくらいわきまえているのです。

けれど私はロリヰタ服を着たいから、ロリヰタでいたいからこうして白い目で見られながらも歩いているのです。


Shina La Soleil代官山店は、一際目立つモダンでシックな外観を装っていました。
私のようなロリヰタには無縁のようなお店です。

ショウウィンドウには今季の新作のお洋服がディスプレイされていました。

意を決して中へ足を踏み入れれば、ショップスタッフに上から下まで嘗め回すように見られます。
それは決して気分のいいものではありません。

すると奥から智鶴さんがやって来ました。


「ようこそお越し下さいました。待ってたのよ、マコちゃん。今日も凄く可愛い格好をしてるのね。」


智鶴さんはそう言ってにっこりと微笑んでくださいました。

Shina La Soleilのお洋服に身を包んだ智鶴さんは、以前会った時とは雰囲気がまるで違います。
前は花柄のワンピースを着て髪を下ろしていましたが、今はグレーのスーツに身を包み、髪もきっちりと上げています。

Shina La Soleilのスーツは、智鶴さんにはとてもよく似合っていました。


「何かお目当ての物でもあるのかしら?」


私は首を横に振りました。


「否、智鶴さんに会いに来ただけですの。
それにここのお洋服は私には似合いませんわ。私、小さいですからShina La Soleilのような大人な女性が着るようなお洋服は似合いませんの。」


私がそう言って苦笑いをすると、智鶴さんは微笑みました。


「そんなことないわ。新作のお洋服だけでも見て行かない?
今季のコレクションでは結構色使いが可愛い物が多いの。」


智鶴さんはそう言って店内を案内してくださいました。
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