猫とうさぎとアリスと女王
　Shina La Soleilのお洋服は背の高い、ヒールの似合う大人な女性が着るイメージが私の中では定着していました。

なのでコレクションではとても服が引き立ちます。
背が高く、スタイルのいいモデルさんに着てもらったお洋服は、とても美しい物でした。

なので私には到底無縁のお洋服。

けれど智鶴さんの言うように、今季のお洋服は可愛いらしい物が多く出ています。


「ほら、これならマコちゃんにも絶対似合うと思うわ。」


智鶴さんはパステルカラーのシフォンドレスを手に取り、私に合わせて見せました。
確かにこのお洋服は可愛いです。

けれどやっぱりどこか大人な雰囲気。私には合わない気がします。


「似合いますか？私にはそう思えないのですが・・・。」

「凄く似合ってる。これはちょっとドレッシーだからそう思うのかもしれないけど、色合いとかマコちゃんにぴったりだと思うな。

でもね、私が一番似合うと思ったのはこれなの。」


そう言って持ってきてくださったのは、グレーのフォーマルドレス。
何故私にお洋服を勧める方は皆ダークな色を薦めるのでしょうか？私には似合わないというのに。


「ねえ、マコちゃん。これちょっと試着してみない？」

「えっ？これをですか？」

「嫌？」

「あの・・・私、黒やグレーの暗い色のお洋服は着たことが無いのです。
似合わないと思うのでずっと避けてきたのですけれど・・・。」


困って俯く私に、智鶴さんはにっこりと笑って言いました。


「あのね、お洋服って人が選ぶんじゃないの。服が人を選ぶのよ。
まず服が人を選ぶことから始まって、その後にどれがいいか人間がチョイスをするの。

だからマコちゃんがずっと黒やグレーのお洋服を避けてたら、お洋服もそれを悟って避けちゃう。人間と一緒なのよ。
ずっと嫌ってたら一生仲良くなんてなれないわ。だから、ちょっとだけ仲良くしてみない？」


その言葉を聞いて、私は試着をすることに決めました。


仲良くしなければ、いけませんわよね。
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