猫とうさぎとアリスと女王
 鳴呼、やはり似合いません。
このグレーのフォーマルな感じが全く以って似合いません。
私は躊躇いながらもフィッティングルームから出ました。


「変では、ないですか?」


智鶴さんの表情は、私を見た瞬間に一気に明るくなりました。


「なんでそんな顔をするの?こんなに似合ってるのに!やっぱり私の目に狂いは無かったわ。」


智鶴さんは鏡を見ながらそう言いました。私の後ろに立って、肩に手を置きながらそう言います。

ハイウエスト切り替えのワンピースドレスは、切り替え部分に黒いベルベットのリボンが付いています。
全体はグレーの光沢感のある煌びやかな生地で、裾からはチュールとレースが覗いています。


「もっと女の子っぽいシルエットにしたいなら、ボレロとかケープを合わせてみてもいいかもね。
あとスカートの中にパニエを入れたら可愛くなると思うな。

髪はアップにして、ベルベットのリボンにするの。
もう想像できるもの!絶対可愛いから!

おそろいで靴とアクセサリーもあるんだけど、合わせてみない?」


私の有無も聞かず、智鶴さんは奥へと行ってしまいました。

智鶴さんの言葉を聞いていると、まるで魔法にかかったような気分になります。
あれほど暗い色が似合わないと思っていたのに、段々と素敵に見えてくるのです。


私はふとメンズ服に手を伸ばしました。

どれもこれもシーナに似合いそうなお洋服ばかり。
そして私はあることに気がつきました。


しばらくして、智鶴さんが持ってきてくれた靴とアクセサリーを私は身に着けました。

靴はほんの少しヒールのある編み上げるタイプの靴。

アクセサリーはゴールドとパールと黒を主に使ったものです。
ぽっかりと開いた首元にかかるようにできたチョーカーとネックレス、そしてイヤリング。


「ほら、凄く可愛いでしょ?」


私は智鶴さんの言葉ににっこりと微笑みました。


「智鶴さんって商売上手ですね。これ、全部いただいてよろしいですか?」

「ええ、勿論。有難う御座います。」


結婚式の装いはこれで決まりです。

智鶴さんの選んでくれた、初めてShina La Soleilで買ったお洋服。
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