猫とうさぎとアリスと女王
 真っ白なチャペル。色とりどりのステンドグラス。
その光に照らされて、岳志さんと智鶴さんは誓いの口付けを交わしました。

たくさんの方々に祝福され、二人は眩しいほどの笑顔で喜びを伝えました。


純白のドレスに身を包んだ智鶴さんはとても美しく、真っ白なタキシードを着た岳志さんもこの上なく素敵でした。

どうやら花嫁衣装はShina La Soleilのオーダーメイドらしく、シーナのお母様が式に顔を出せないせめてものお詫びの気持ちらしいです。
シーナは私に奏教えてくださいました。



外へと続くチャペルの階段を下り、私たちは花びらのシャワーを二人に浴びせます。
皆が声を揃えて“おめでとう”と声をかけていました。

階段を下りきったところで智鶴さんが私とシーナに気付きました。


「マコちゃん!来てくれたの?しかもその服・・・。」

「私みたいな人間がお邪魔してしまってすいません。
けれど来てよかったです。こんなに綺麗なお二人の姿を見れたのですもの。」


私が笑顔で言うと、智鶴さんは感極まったのか涙を流していました。


「本当に嬉しい。ありがとう。」

「岳志さん、智鶴さん、ご結婚おめでとうございます。」


すると智鶴さんはシーナに目を移しました。


「飛絽彦くんも有難う。」


シーナはにっこりと微笑みます。


「ご結婚おめでとう御座います。どうか、幸せになってください。」


シーナの言葉に笑顔で返し、二人は別の招待客の方々に挨拶に行きました。

最後の言葉には、何かたくさんの意味が込められているように思えました。
シーナは何を思っているのでしょうか。
岳志さんも、智鶴さんも。

けれどそんなことはどうでもいい気がします。
だってあの二人、とっても幸せそうなんですもの。


するとシーナが私の手をきゅっと握ります。

ふとシーナを見れば、視線をそらして俯いていました。


「ごめん、マコ。もう泣かないようにしようって決めたのにな・・・。
二人があまりにも綺麗だから、泣けてきちゃった。」


私は真っ直ぐ前を向いて、シーナの手を握っていました。


幸福の鐘の音が、空から降ってきました。

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