猫とうさぎとアリスと女王
 「それでお返事はしましたの?」


イオはお茶を一口飲み、不安げな表情で答えます。


「はっきりとは言っていないわ。私、よくわからないから。
トラさんが恋愛対象として好きなのか、それとも友達でいたいのか。

けれどトラさんは平気なの。他の男性と違う。
だからお友達からってことで一緒にお出かけしたり、話をしたり、そういう関係から始めましょうって言ったの。」


なんだかイオが可愛らしく見えます。

いつもは大人びた性格のイオが、恋愛となると初心な女の子へと変貌します。
こんな一面をトラが見たら、可愛すぎて卒倒してしまうのではないのかしら?


「トラは強くて、真っ直ぐな人間です。決してイオを傷つけないと思いますわ。
もし妙なことをしたら私が半殺しにしてさしあげますからご安心を。」


私がにっこりと微笑んで言えば、最後の言葉にイオは表情を崩しました。


「私もトラさんを信じたいの。私のこといつも考えてくれているし。
トラさんなら大丈夫かな?って思えるから。」

「ゆっくりでいいので、しっかりとした答えを導き出してください。
トラはイオの正直な心を望んでいるはずですから。」


その言葉にイオは柔らかな笑みをこぼしました。



正直、トラにイオを取られてしまうようでほんの少し寂しい気持ちはあります。

けれど私はイオもトラも大好きですから。
だからこそ二人に幸せになってほしいのです。


イオはあの容姿でずっと男性恐怖症では可哀相ですし、トラも数々の困難を乗り越えてきています。
私のことを第一に考え、体を張って守ってくださった時も何度かありました。

だからそろそろ一番に愛する人を守ってほしいのです。
私では無く、愛しい人のために。


私は心の底から二人の幸せを願っています。


そう思うと、なんだか心が温かくなりました。
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