猫とうさぎとアリスと女王
 あの後、イオはサボとシーナにも同じ報告をしました。
シーナは素直に祝福の言葉をかけ、サボはどうでもいいような返事をしました。

トラからも直々に私に知らせがありました。

恐縮して小さくなったトラは、顔を真っ赤にして私にその旨を伝えてきました。
別にまだ付き合っているという訳ではないというのに、何をそれほど緊張しているのでしょうか。

けれどトラの初々しい態度に、私は微笑まずにはいられませんでした。



そして何事も無い日が続きました。

いつも通りの日常。静かな毎日。
そんなある日、私の携帯電話が鳴りました。


“集合”


それはサボからのメール。

私は仕方なくまた授業を抜け出し、例の場所へと向かいます。


図書館の奥のベランダへ行けば、そこにはサボ一人しかいません。


「イオとシーナはまだですか?」

「シーナはコンクールの絵の仕上げで家に引きこもってる。
イオは呼んでない。お前だけにメールした。」


訳がわかりませんでした。

何故、私だけを呼ぶ必要があったのでしょうか?
私と二人きりで話すようなことなど無かった筈・・・。


「何か大事なお話でもあるのですか?」


試すように私が問えば、サボは煙草を取り出して口に銜えます。
けれど決して火はつけません。


「お前に聞きたいことがあってさ。」


そう呟いたサボは、なんだかいつもとは違う雰囲気を纏っていました。

私も頭が悪いわけではありませんから、その空気は読めます。
サボが私に非常に重大なことを訊こうとしていること。




「イオは茶道の家元の娘。シーナは有名デザイナーの息子。俺は大病院の息子。


マコ、お前の親は何をしてる人間なんだ?」



私の背筋に冷たい汗が流れるのがわかりました。
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