猫とうさぎとアリスと女王
 その言葉を、私は恐れていました。

両親の職業、家柄、そして自分自身のことを詮索されるのを。
できることならこのまま口を閉ざし、命が尽きる日まで言いたくはありませんでした。

けれどサボは、きっと気付いているでしょう。

私の家柄、過去、私という人間のことを。


「無理に言えとは言わねえよ。」


強ばった表情の私に、サボは言いました。


「けどよ、お前、俺が薬やってるって一発でわかっただろ?誰かに聞いた訳でもねえのに。
ってことはお前の近くに薬をやってる人間がいたってことだ。
もしくは薬をやってる人間を間近で見たか。

探るような真似して悪いけど、もしかしてお前・・・。」


「やめてください!」


気が付くと私は大声を上げてサボの言葉を遮っていました。

その先は言って欲しくなかったから・・・。
もう消したはずの過去。

全てのものを断ち切った私には、一切関係の無いこと。

けれど、消せない過去。


ついに言う時が来たのだと、私は悟りました。



「サボ、貴方が思っていることはきっと想像ではありませんわ。」


そう言うとサボは深いため息をつきました。


「黙ってること無かっただろ。
お前のことだからわかってたんだろ?俺がそのことに気付くことくらい。

薬にからんでるんだから裏のことくらい少しは知ってるんだからよ。」


私は無言で頷きました。


「けれど、知って欲しくは無いと思っていました。気付かないことを願っていたのに・・・。」

「勘が鋭くて悪かったな。」


サボはまたニヤニヤと笑いました。

私は酷く落ち込んでいるというのに、サボはそれを楽しんでいるよう。
本当に性格が歪んでいます。





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